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副鼻腔炎の手術とはどんなものか?

いわゆる「蓄膿:ちくのう」は、医学用語でいうと副鼻腔炎になります。鼻閉、鼻汁、後鼻漏、頭痛、咳、痰、嗅覚障害などの症状を引き起こします。薬や鼻洗浄で治ることがありますが、治らない場合は手術が選択されます。副鼻腔炎の手術とはどんなものか、解説いたします。

1.副鼻腔とは?

顔の骨の中に副鼻腔(ふくびくう)という空間があります。場所によって呼び方が違い、上顎洞(じょうがくどう)、篩骨洞(しこつどう)、前頭洞(ぜんとうどう)、蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)に分類されます。すべての空間は鼻の中とつながっており、空気の換気をしています。

2.副鼻腔の役割は?

副鼻腔が何故存在するのかということはよくわかっていません。一つは頭の重さを軽くするためともいわれています。また、音が響く共鳴腔としての役割もあるといわれています。実際に副鼻腔炎になってしまうと鼻声になってしまうため、共鳴腔としての役割はあるのでしょうが、副鼻腔はなくても別に困ることはないようです。特に前頭洞や蝶形骨洞はその大きさに個人差があり、ほとんど空間がない方もいれば大きい空間の方もいます。

3.副鼻腔炎とは?

副鼻腔内に炎症をきたした場合を副鼻腔炎と呼びます。ひどい鼻かぜが副鼻腔に炎症をきたすと頭痛、膿性鼻汁を認め、これを「急性副鼻腔炎」といいます。炎症が3か月以上長引くと慢性副鼻腔炎となり、内服薬で治らなければ手術が適応となります。また、虫歯が原因で副鼻腔炎になることがあり、これを「歯性上顎洞炎」といいます。特殊なものとしてはカビが原因となることがあり、これを「副鼻腔真菌症」といいます。カビは感染すると非常に治りにくく、目や頭にカビが進行していく「浸潤型副鼻腔真菌症」というものもあり、中には命を奪ってしまうものがあります。カビに対するアレルギーでおこる「アレルギー性真菌性副鼻腔炎」なるものもあります。別のブログでも書いていますが、体質的におこる「好酸球性副鼻腔炎」の患者さんは最近増えてきており、問題となっています。

4.副鼻腔炎の手術はどんなことをするのか?

急性副鼻腔炎は風邪の延長ですので、通常は内服薬や鼻洗浄で治療をします。問題は、内服薬でも治らない副鼻腔炎です。原因はいろいろありますが、手術の目的は副鼻腔と鼻の中の交通路を広げて副鼻腔内の換気がつくような形態にすることと、副鼻腔内の炎症巣を治療することです。

5. 手術の術式について

現在は国が決めている診療報酬点数があります。副鼻腔の手術は、内視鏡下鼻・副鼻腔手術I型(副鼻腔自然口開窓術)、内視鏡下鼻・副鼻腔手術II型(副鼻腔単洞手術)、内視鏡下鼻・副鼻腔手術III型(選択的(複数洞)副鼻腔手術)、内視鏡下鼻・副鼻腔手術Ⅳ型(汎副鼻腔手術)、内視鏡下鼻・副鼻腔手術Ⅴ型(拡大副鼻腔手術)に分けられています。簡単にいうと5つに分類されているということです。I型は副鼻腔の入口のみをさわる、II型は一つの副鼻腔を開放する、III型は複数の副鼻腔を開放する、IV型はすべての副鼻腔を開放する、V型は副鼻腔以外の頭蓋底、翼口蓋窩、眼窩の手術をするというものです。難易度が違いますので、I型~V型まで診療報酬点数が異なります(値段が違います)。

6. 手術の方法

麻酔の方法は局所麻酔でも全身麻酔でも行われます。病変の強い場合は全身麻酔が選択されます。どちらを選択するのかは術者や施設によって違いますので、手術をうけられる際は確認されるといいかと思います。
昔と違って、今はほぼすべての副鼻腔手術は内視鏡を使用して手術をします。しかしながら内視鏡のみでは困難な場合は外切開といって、歯茎や顔に切開をいれて手術をすることがまれにあります。通常の副鼻腔手術は左手で内視鏡を使い、鼻の中を観察しながら右手で手術をしていきます。腫瘍や頭蓋底の大きな手術だと、一人はカメラ係、一人は吸引係などの役割分担をして複数の術者が入って手術をします。右手のみの手術操作になりますので、吸いながら剥ぐ、吸いながら止血する、吸いながら切除するなどの一つで二役、三役の器械が使用されることが多いです。
副鼻腔の手術を例えるなら、ドアを開けると向こう側に病変があり、それをきれいにしたらその向こうのドアを開けて、その向こうへと進んでいくという手術です。当然鼻の中には「ここを開けたらいいですよ」というドアは存在しないために、CT画像をきちんとみてその解剖に熟知しておく必要があります。手術中にこの解剖の判断をアシストしてくれるのが「ナビゲーションシステム」になります。

7.危険性や合併症は?

外科手術は常に合併症と隣り合わせにあります。しかし合併症を知り、これを起こさないように術者は日々研鑽を積んでいます。副鼻腔手術の合併症には出血、目の合併症、頭の合併症、感染が挙げられます。

7-1. 出血

副鼻腔の炎症が強い場合は術中出血が多くなります。また、腫瘍性病変は血流が多く、やはり出血量も増えます。手術中の出血は、手術器械もそろっており、出血が止まらなくなることはほぼありません。しかし、術後しばらくしてからおこる術後出血というものがあります。術後出血の原因は、大きく2つあると私は思っています。一つは傷からの出血です。手術中は全く出血がなかった創部から出血することがあります。手術に使用する局所麻酔や手術操作で血管が収縮(縮まる)しており、ほとんど出血していなかったのが、その後に血管が拡張(広がる)することにより出血をきたすというものです。もう一つは、血行路の問題と考えています。術後出血の中に、明らかに手術中にはさわっていない場所から出血をきたすことがあります。手術をすると鼻・副鼻腔の血流が変化して、通常は10ぐらいの血液しか流れていない血管に50とか、100とかの血流が入って出血をきたすにではないかと考えています。

7-2. 目の合併症

目は副鼻腔と近接しており、紙様板とよばれる非常に薄い骨で仕切られています。まれですが、その骨に先天的に穴があいている方もいます。手術中にこの仕切りの骨(紙様板)にひびや孔があいて副鼻腔と交通路がつくと、目の中に血液が入ります。そうすると目が痛む、腫れる、目の周りに皮下出血するという症状がでます。もし多くの血液が目のほうに入ると眼圧があがり、視力が低下することがあります。その際は緊急の手術が必要になります。

7-3.頭の合併症

頭も目と同様に副鼻腔と近接しており、非常に薄い骨で仕切られています。術中に交通路がつくと、頭蓋内にある脊髄液が副鼻腔に流れてきます。流れてくると手術中に閉鎖しますが、脊髄液の圧が上昇しないよう、また頭蓋内に感染がおきないようにしばらく入院が必要になることがあります。

7-4.感染

鼻内は感染に強い構造をしているためか、術後はほとんど感染をきたしません。しかし非常にまれですが、ブドウ球菌からでる毒素から防御できる抗体をもっていない体質の方がいらっしゃいます。そういった方に術後感染がおこることがあるといわれています。この感染は非常に重症で、他の臓器障害を引き起こすことがあります。

8.まとめ

副鼻腔と、副鼻腔炎の手術について解説いたしました。手術を受けるとなると、怖いものです。合併症など読めば読むほど手術を受けたくなくなるのもわかります。しかしながら合併症を起こそうと思いながら手術をしている術者はおらず、我々はどうすれば合併症を無くしながら手術を成功させるかということを考えています。副鼻腔炎で手術をすすめられている方は副鼻腔とはどんなものかを理解し、そして自分の副鼻腔炎はどういった状態かを把握して、手術の術式や合併症について主治医の先生と相談されると良いかと思います。

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